2024年の12月に出版された新刊で「科学的根拠子育て」という本があります。
この本の著者の中室さんは過去に発行部数累計37万部を突破した「学力の経済学」という本も出版しており、学力と年収の関係性など勉強が人生においてどんな役割を果たすのかというのを統計学を用いて研究しています。
そして、今回出版された「科学的根拠で子育て」について、TOP生にも知っておいて欲しい情報が多数ありましたので、3週にわたりテーマを変えて発信していきます。
ここで興味がでたら、ぜひ購入してみてください。
ワンランク上の下位か、ワンランク下の上位か
これは、進路選択の永遠のテーマでもあります。
特に上位を目指す子にとっては、
「このまま上位の学校を目指して受かるかどうかわからないけどチャレンジするか、偏差値のランクを下げて確実に入れそうな学校にするか」と、悩みの種ですし、
保護者にとっても「上位の学校にギリギリでも入る方がいいか、学力的には余裕をもって入ってその学校で上位を目指した方がいいか」と悩むと思います。
この本の中では、実際に上記のテーマで統計を取り、どんな相関関係があるかを客観的な事実としてまとめていました。
結論から言うと、
経済学的には圧倒的に「ワンランク下の上位」の方が優勢です。
その根拠になるデータを紹介します。
データ①
もともと学力上位20%の児童は同じクラスに自分と同様に学力の高い同級生がいることによって学力は上昇しますが、もともと学力が下位20%の児童は同じクラスに学力の高い同級生がいることによって、むしろ学力が下がってしまったことが研究の結果明らかになっています。つまり、優れた同級生からいい影響を受けるのは、もともと学力が高い人だけということです。
データ②
進学前の段階では同じ実力のAさんとBさんがいたとして、Aさんは少しでも偏差値の高い学校に最下位で入学し、Bさんは偏差値を下げた学校を学年1位で入学したとします。いろんな研究で、この場合後に有利になるのはBさんだそうです。「鶏口となるも牛後となるなかれ(小さな集団でリーダーとなるほうが、大きな集団で従うよりもよいという意味)」というのが正しいことが科学的に証明されています。
こうなってしまう原因の1つに、人は自分と同じような能力・価値観の人と親しくなりやすい「ホモフィリー」という性質があり、能力が自分より優れている人を「雲の上の存在だ」の認識してしまい親しく声をかけて交流しにくいという特徴があるそうです。
ピア効果で学力アップ!
ただ、もちろんレベルの高い環境から得られるのは悪い影響だけではありません。
意識や能力が近い人同士が互いに影響を与え合うことで、個人の成長や集団のレベルアップにつながる“ピア効果”というものが本の中でも紹介されていました。
なので、この研究結果を見て、志望校を下げようとするのは安易すぎますね。
自分にとって生ぬるい環境にいると、自分もどんどん怠けていくのが人間というものだとも思っています。
過去の生徒の中にも、川高いけるぐらいの学力を持ちながら和国に行った子がいて、入学当初は指定校推薦を狙うと意気込んで入学しましたが、今は真ん中より少し下ぐらいです。
現実はそう甘くありませんね。
ランク下の上位でい続けることは、周りの環境を言い訳にせず、高校3年間努力しつけることが必要なので、それは、ランク上の下位に入ることよりよっぽど大変なことなのです。
どちらを選んでもいい。ただ…。
アメリカで3000人の高校生を対象に行った調査では、高校生の時の成績順位が53歳時点の収入にまで影響を及ぼすことが示されており、成績が低いと収入が低くなるだけでなく、未成年での飲酒や喫煙、暴力行為に及ぶ確率が高まるなど、性格的な特徴にも大きな影響を及ぼすそうです。
上位の高校にギリギリで入っても、下位の学校に余裕で入っても、
結局大事なのは入った後です。
自分の性格を考えて、学力ギリギリで入っても入学後頑張れそうなら最後まで上を目指していいでしょうし、学力に余裕を持って入っても油断しない自信があるなら、ランクを下げて入ってもいいと思います。
進路選択は、無謀な挑戦をすればいいというものでもありません。
目標を掲げてそれに釣り合う努力が出来なければただの夢想家になってしまいます。
理想と現実のギャップを見定めて、覚悟を持った進路選択を心がけましょう。