最近、面白い本を読みました。
本田由紀さん『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書、2020年)

内容を簡単に説明すると、
日本の教育は、子どもたちの何を「良い」として評価してきたのか?
を、歴史をたどりながら考える本です。
TOP-TIMESを読んで興味が出たら、ぜひ読んでみてください♪
今回は、この本の内容を少し紹介しながら、塾講師として感じたことを書いてみようと思います。
教育は「能力」を評価してきた
日本の教育は、長い間「能力」を重視してきました。
テストの点数、偏差値、学歴など
どれくらい勉強ができるのか、どれくらいの知識や技能を持っているのか。
そういったものを基準にして、子どもたちを評価してきました。
「数学80点!」「偏差値60!」「前回より10点アップ!」
「○○高校合格!」「○○大学卒業」

君たちも、それが大事だと信じて、勉強している部分もきっとあるでしょう。
当然、数字には良いところもあります。
頑張った結果が分かりやすいですし、成長を実感できますし、目標を立てやすいですよね。
だから、点数や偏差値を評価すること自体が悪いわけではありません。
ただ、本書を読んで考えさせられるのは、
「能力を測ること」と「その人を評価すること」は、本当に同じなのか?
ということです。
テストの点数が低いからといって、その子に価値がないわけでは当然ありません。
「態度」を評価する時代へ
さらに時代が進むと、教育では「能力」だけでなく、
「主体性」「協調性」「積極性」「コミュニケーション能力」
といったものも重視されるようになります。
内申点が大事だよって散々言われてきましたね?笑
大学入試でも、総合型選抜や学校推薦型選抜など、知識・技能だけではなく、さまざまな側面を評価する入試が増えています。

つまり、
「何ができるか」だけではなく、「どんな態度で取り組むか」
まで評価するようになったということです。
これも、とても良いことに思えます。
実際、社会に出れば、知識だけで仕事ができるわけではありません。
人と協力する力や、自分から動く力も大切です。生徒たちを見ていても、成績だけでは測れない部分がたくさんあると感じます。
授業では発言しないけれど、誰よりも真剣に話を聞いている子。
分からない問題があっても、諦めずに何度も挑戦する子。
友達が困っていたら自然に教えてあげられる子。
こういう部分も、その子の大切な力なのです。
一見すると、「点数だけで人を判断しない、良い教育になった!」ようにみえます。
ただ、本田さんは、ここに別の問題があると指摘しています。
評価するものが増えたことで、別の問題も生まれた
例えば、「主体的に行動しましょう」「積極的に発言しましょう」「周りと協力しましょう」と言われたときに、
もちろん、できることは素晴らしい。
でも、全員が同じように積極的である必要はないはずです。
静かに考えることが得意な子も、人前で話すのが苦手な子も、一人で黙々と努力することが得意な子もいます。
それなのに、「積極的に発言する子=良い子」のように評価してしまえば、今度は別の形で子どもたちを同じ方向に揃えてしまう。
本書では、こうした問題を「水平的画一化」という言葉で捉えています。
これには、かなり考えさせられました。
教育って、子どもたちを「良い方向」に導こうとするあまり、いつの間にか「良い人間の型」を押し付けてしまうことがあるのかもしれません。
「みんな同じように主体的であれ」「みんな協調的であれ」「みんな積極的であれ」という、別の型を求めるようになってしまうのは、決して良いことではないように思えますね。
「みんな違っていい」を、本当に評価できるのか
では、どうすればいいのか。
本書では、単純に能力を縦に並べる「垂直的序列化」でもなく、みんなを同じ方向に揃える「水平的画一化」でもなく、「水平的多様化」という方向が示されます。
簡単に言えば、「人にはいろいろな良さがある。それを認められる教育にしていこう」ということだと思います。
これって、言葉にすると当たり前なんですよね。
「みんな違って、みんないい。」誰もが一度は聞いたことがある言葉です。
でも、実際には、ものすごく難しいことなんです。
テストには点数があるし、偏差値には数字があるし、高校入試には合否があります。
世の中「比べる」ということから完全に逃れることはできません。
だから、僕たちは
「評価しているものが、すべてではない」ということを理解していないといけないのだと思います。
塾なので、立場上、君たちの成績を上げることが何より重要です。
点数も、偏差値も、合格も、とっっっっても大切です。
ただ、それだけが君らの価値では決してありません。
大切なのは、その結果から何を感じて、何を考えて、次にどうするかではないでしょうか。
これから先、みんなを評価する人はたくさんいます。
でも、自分のことを一番近くで見ているのは、自分自身です。
誰かにつけられた数字だけで、自分の価値を決めつけないでください。
勉強を通して、点数や偏差値だけではない、自分だけの「できる」を増やしていってほしいと思います。
そして、いつか振り返ったときに、
「あの頃の自分より、今の自分のほうがちょっと好きだな」
と思える、そんな成長ができることを願っています。

